56人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう、忘れてんやな」
力也が私の瞳を見ながら微笑んだ。
「……覚えているけど」
でも、今は付き合っていないけど好きな人がいるって言ったから、新しく好きな人が出来たんだと思っていた……。
「6年も前のことやから、みなは気にせんでええ。そのまま前に進んでええんや。けど、これは俺が持っていてもええか?」
「うん……」
頷きながらも、私は力也の手からリボンを取った。
「私もね、簡単に人を好きになったり、好きじゃなくなったり出来ないみたい」
そう言うと、きょとんとした顔になった力也を見て笑った。
「だからね、秀ちゃんが好きになってくれなかったら、リキ兄ちゃんと結婚してあげる。でも、秀ちゃんが好きになってくれたら、無理だからね」
こうやって力也の手首にリボンを巻くのは3回目だな、と思いながら、私はくすくすと笑って力也の顔を見た。
相変わらずただ私を見ていたけど、すぐに口元が緩んで「この前のも入れると、その台詞4回目やな」と言った。そして、6年前と同じように「結婚かあ」とニヤケた。
最初のコメントを投稿しよう!