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「せやけど、みなはええんか? 俺の足……」
「だから、リキ兄は気が早いんだってば。秀ちゃんに振られなかったら無理だって言ったでしょ」
私はケラケラと笑って、倒れてしまった車椅子を起こした。
「なんや、おまえ。人の家庭を壊す気なんか?」
「そんなの、秀ちゃん次第だからわかんない」
私が車椅子を支えていると、力也が腕を使って後ろ向きで座って、「ほな、麗があのウチから追い出されるんやな」と笑った。
「えっ、うららちゃんを不幸にしないで! 秀ちゃんが追い出されるかもしれないじゃん」
そんな意味のない言い合いをしながら、私たちは教会の門へ向かった。
今日も力也の髪は太陽の光でより艶やかに輝いて、綺麗な天使の輪が出来ていた。
「秀一がOKしよったら、麗の不幸はおまえのせいやろ。嫌なら、俺と結婚やな」
「じゃあ……こっちで美容師の専門学校でも探そうかな」
私は静かな口調で笑って、力也の様子を窺うように顔を見た。力也もこちらをチラリと見ると「ええんちゃう」と静かに微笑んだ。
「せやけど、他にやりたいことないか考えなあかん」
「うーん、今は美容院でもエステとかアロママッサージとか、ネイルやメイクも出来たりするよね。そういう方面で広く検討してみようかな」
普通に結婚後の話をしているのがくすぐったくて、私はくすくすと笑った。
「だけど、タケル君は反対だって、リキ兄ちゃんと付き合うの」
「……そうなんかな。この教会に行けって猛先生に言われてんや。みながおるのは言わへんかったけど」
「えっ?」
私は思わず立ち止まった。
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