プロローグ

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 夢だったのか、起きる直前に考えていたことだったのか、最近はいつも同じ場面が頭に残ったまま目覚めることが多い。  私は遮光カーテンの隙間から差し込む光を感じて目をこすった。日の光を浴びて起きるって気持ちがいい、なんて次元ではないほど朝陽が強く入る部屋で、寝起きが悪くない私にはあまり適さない。  身体を起こしてまだ鳴っていない目覚まし時計を見ると、起床時間より20分も早かった。中途半端でもう眠れない。  カーテンをきちんと閉めなかった自分にため息をついた。仕方が無いからベッドから出て一階に下りた。ダイニングのドアを開けると、対面式キッチンの中で母が鼻歌まじりに朝食の用意をしている姿が見えた。  いつもの朝の風景だ。 「あら、美菜ちゃんおはよう」  もうすぐ22歳になろうとしている娘をちゃん付けで呼ぶ。なんと言うか、この人は無邪気な人だといつも思う。 「おはよう。コーヒー飲みたいな」 「はいはい」  無邪気でいつも笑顔の優しい人。  朝は焼きたてのパンと挽きたてのコーヒーが出てくる。それが毎朝、何故かとってもくすぐったい気持ちになる。
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