#04

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*  何か食べたいものはあるかと聞かれたので「肉」と即答したら、素敵なダイニングバーに連れて行ってもらえた。薄暗い店内の照明はほんのりオレンジ色。小上がりになった個室に通される。  キョロキョロしすぎたのだろう。挙動不審な私に対する樹の目つきには明らかに軽蔑が混じっている。こっちはもう精一杯。これ以上どうすればいいの。  気を取り直したように、樹が言った。 「ここのローストビーフは絶品ですよ。おすすめします」 「うわあ、テンションあがる」  近頃のお洒落男子はこういうところでデートしているわけか。彼女もきっと女子力高めの綺麗な人なんだろうなあ。肉で浮かれまくってる三十路女なんか、そりゃ引くだろうねえ。  あ、明日の授業の準備がまだ終わってない。徹夜かなあ。そんなことを考えていると。  ローストビーフとグラスワインがテーブルに並べられた。だめだ、くらくらする。肉が輝いてるよ。 「カンパイしましょうか?」  私が聞くと。 「いえ、いいです。どうぞ召し上がってください」  そっけなく言われてしまった。     
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