3058人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「あいつら出て行ったよ。男のところだよ。ガキは俺の子じゃない。知ってたけど、信者を見捨てるわけにはいかんだろ?」
佐竹は、少しも変わらない。根から腐っている、狂ってしまっている。
「あのメッセージは俺だよ。昨夜、こっそり健太郎のスマホから送った。あいつ、俺には無防備だから、簡単だ」
私の体をまさぐりながら、佐竹は言った。殺してやりたいと何度も思ったけど、今が一番、その気持ちは強いかもしれない。
「エサにすぐに飛びつくお前は、アホだ」
観念しろ、そう言われたような気がした。
今さら佐竹に抱かれることなんか、なんでもないことかもしれない。どうせ何度も抱かれてきたのだから。
どうして、いつも、佐竹の自由にされてしまうのだろう。私は佐竹をこれっぽっちも愛していないのに。
だけど、友達だった。楽しい思い出もたくさんある。佐竹はものすごく偏りのあるやつだけど、一人ぼっちの私を見つけて笑いかけてくれた。仲間にしてくれた、優しくしてくれた、そばにいてくれた。
もう、いいや。
私はあきらめてしまった。
またあの関係がはじまるのだ。ひどく淫らで、長い、暗い、湿ったような。あの日々が。
目を閉じて、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
最初のコメントを投稿しよう!