#10

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「あいつら出て行ったよ。男のところだよ。ガキは俺の子じゃない。知ってたけど、信者を見捨てるわけにはいかんだろ?」  佐竹は、少しも変わらない。根から腐っている、狂ってしまっている。 「あのメッセージは俺だよ。昨夜、こっそり健太郎のスマホから送った。あいつ、俺には無防備だから、簡単だ」  私の体をまさぐりながら、佐竹は言った。殺してやりたいと何度も思ったけど、今が一番、その気持ちは強いかもしれない。   「エサにすぐに飛びつくお前は、アホだ」  観念しろ、そう言われたような気がした。  今さら佐竹に抱かれることなんか、なんでもないことかもしれない。どうせ何度も抱かれてきたのだから。  どうして、いつも、佐竹の自由にされてしまうのだろう。私は佐竹をこれっぽっちも愛していないのに。  だけど、友達だった。楽しい思い出もたくさんある。佐竹はものすごく偏りのあるやつだけど、一人ぼっちの私を見つけて笑いかけてくれた。仲間にしてくれた、優しくしてくれた、そばにいてくれた。  もう、いいや。  私はあきらめてしまった。  またあの関係がはじまるのだ。ひどく淫らで、長い、暗い、湿ったような。あの日々が。  目を閉じて、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
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