#04

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 お腹が空いているのを見抜かれたのだろうか。なんて、そんなこと考えてもどうしようもない。お礼がすめば、もう会うこともないだろうし、たくさん食べて飲んで勝手に楽しんで帰ろう。  しばらく他愛もない話を続けていたら、唐突にその質問はやってきた。 「美紘さんは婚活しているんでしょう?」  へ? うっかりまぬけな声を出してしまった。調子にのってワインのボトルまで開けてしまい、少し酔っぱらっているせいだ。 「お見合い、他にもしているんじゃないんですか?」  樹はそう言いながら、またグラスにワインを注いでくれた。 「いいえ、お見合いは樹さんとが初めてですよ。教頭先生、いつも自慢の甥っ子だって樹さんのこと褒めていらして。どんなかたなのかなあって興味がわいたもので」  ふふっ。自慢通りのイケメンで、何より正義感の強いしっかりとした男性でした、なんてさすがに恥ずかしくて言えないか。 「のんびりしていないで急いで結婚したほうがいいと思いますよ。あんな変な男につけ狙われないように」  のんびりって、そこは余計なお世話というものだけど。本気で心配してくれているのだろうと素直に樹の言葉に感謝する。  そう言えば、私だって本気で結婚しようと思ったときもあったんだ。合コンだってお見合いパーティーにだって熱心に参加した。それはほんの数年前のことだけど、もう遠く懐かしく思える。     
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