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「籍を入れてしまえば、すぐに、美紘さんのものになりますよ」
だけどそんなものに、美紘はなんの興味も持たないだろう。服も鞄も安物ばかり。そもそも身だしなみに気をつかわなすぎる。素材は悪くないのに、もったいない。
「分かりました、その分、体で返します」
「えっ?」
「じゃなくて、労働で返しますって意味です」
わははー、とまた大口を開けて笑っている。なんというか、先が思いやられる。
「基本的にシェアハウスみたいなもんですから、自分のことは自分でやります。僕のことは気にせず、自由に暮らしてください。お互いの部屋には勝手に入らない、生活にも干渉しない。それで、いいですよね?」
「はい、了承しました。あ、そうだ、引っ越しそば、食べません? さっきスーパーで買ってきたので、すぐに準備しますね。茹でるだけですから、待っててください」
まったく理解していないじゃないか。教師のくせに、どうしてこうも人の話を聞かないのだ。すでに俺の自由を奪おうとしていることに気づけ。
「今日だけはつきあいますけど、もうそういうのも無しで。食事も別々でお願いします」
「ええっ、それは困ります。一緒に食べた方が無駄がないし、何より美味しいじゃないですか」
「だから……」
「ぎゃーっ!」
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