#07

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「だから、それが私のことでもあるんですってば」 「これじゃ、契約した意味がない」 「ありますよ、じゅうぶんに。私、母親のような気持ちなんです。樹さんを幸せにしたいって、母親が子供を思うのと同じ気持ちで言っています」  この人、本気でそんなことを思っているのか? だとしたら、頭がおかしい。 「美紘さん、そういうふわっとしたものの考え方、もうやめたらどうですか。あなた三十歳なんですよ? それに、教師なんでしょう? そんなんだからストーカーに狙われたり、佐竹とかいうチンピラみたいなのにつけいられるんですよ」  ぶはははははっ!  美紘が大笑いしている。 「チンピラって、ウケる。そうですね、その通りです。あいつ、ダサっ」    すっかり話をする気力が失せた。  俺の幸せって、なんだよ。  母親の気持ちって、なんだよ。  まったく調子が狂う。嫌な汗がでる。頭がぼうっとしてきた。  とにかく子供を作ろう。  そうすれば俺から気がそれるんじゃないか。  すぐにだっていい、もう、今夜、抱いてしまおう。
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