#08

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#08

 ピピピピッ。デジタル体温計が鳴る。  脇から取り出そうとすると、すかさず美紘(みひろ)に奪われた。 「38.6度ですよ、大丈夫ですか?」 「寝ていれば、平気です」  変な汗も、ぼんやりするのも、熱のせいだったのか。同居初日で早速これじゃ、かっこ悪すぎる。  部屋に入るなと言ったのに、美紘はベッドのそばにはりついていた。もしかして、看病でもする気なのか。 「薬を買ってきます、大人しく寝ててくださいね」  断ろうとしたのに、返事も聞かずに部屋を飛び出していく。 「まいったな」  美紘から顔が赤いと言われるまで、自分では気づいていなかった。冷たい手を額に当てられ、ぞくりとしたのが熱のせいだなんて思わなかった。今夜、美紘を抱く気でいたからだ。  もし神様が見ているのなら、罰を与えたのかもしれない。  自分がそうされたからと言って、自分勝手に女を抱くことは許さない、そういった啓示なのかもしれない。  なんて。くだらない。熱のせいだ。神様なんているはずないだろ。     
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