#08

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 それにしても、夜に一人で外に出しても良かったのか。まだこの辺の地理にも詳しくないはずだ。迷っていないだろうか。悪い男にからまれていないだろうか。美紘は変な女だが、スタイルもいいし、顔だって美人だ。それでいて、無防備で鈍感。いつも危ない目にあっている。  体は汗でぐっしょりだった。さすがに気持ち悪い、すぐにでも着替えたい。  ウォークインクローゼットまでのほんの数歩が、だるい。腕をあげるのさえ、つらい。壁にもたれ、片手でTシャツを脱ぎ捨てた。新しい服を取り出そうとしたが、頭が痛くなりしゃがみこんだ。あと、関節と喉も痛い。  玄関ドアのシリンダーが回る音がした。帰ってきたんだ。  ガサガサとビニール袋がこすれる音がする。そして廊下を騒がしく走る音。あちらこちらの部屋のドアが激しく開かれたり閉じられたリしていている。何をしているのだろう。病人がいるというのに、もう少し静かにできないものだろうか。    ついに、俺の部屋のドアが開いた。  同時に、わっ、と声をあげる。  美紘はマスクとビニール手袋をして立っていた。見覚えのあるジャージに着替え、髪もひとつにくくっている。 「寝ててくださいって言いましたよね? 何してるんですか、それも裸で!」  着替えようと思ったんだよ、そう言いたかったが、声が出なかった。 「感染症を学校に持ち込むわけにはいかないので、念のために重装備で失礼します」     
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