#08

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 マスクと手袋のことを言っているのか? なるほど、そういうわけか、そんなことを思っていたら。  美紘によってぐるぐると毛布にくるまれてしまった。 「パジャマ、どこですか?」  そんなに乱暴に人の服をかきまわすな。 「下着は、どこ?」  もう、いいから、出て行ってくれないかな。 「とりあえず、これでいいか」  ぽんぽんと服や下着を取り出しては投げる。雑すぎるだろ。 「着替える前に、体をふきましょう。そのまま、動かないで」  また、走って行ってしまう。他人と暮らすのが、こんなにめんどうだとは知らなかった。実家にいたころは、かまわれる時間より一人でいる時間のほうがずっと長かったのだ。誰と暮らしても、そういうもんだと思っていた。  お湯をはった洗面器とタオルを持って、美紘が戻ってくる。床をぬらされそうだと心配になる。 「じゃあ、少しガマンしてくださいね」  そう言うと、毛布をずらされた。絞ったタオルを体に当てられる。  タオルの温かな感触が、首元、肩、胸へと降りてくる。これ以上どうするつもりなんだ。今度は脇の下を通り、背中へと手が回る。美紘の顔が胸元に来た。消毒液のにおいがした。  無理だ、そう思った。  なんとか力を振りしぼって、美紘の体を押し返す。 「もう、やめろ」  それだけ言うのが精一杯だった。     
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