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「ごめんなさい」
「出て行ってくれ」
一瞬、美紘の目が潤んだ気がしたが、まさかこのくらいで泣くような女じゃない。
「薬と水は準備しておきますから、飲んでから寝てくださいね」
部屋を出るときは密やかなものだった。だったら最初から大人しくしていればいい。余計なことばかりしてくれる。本気で母親にでもなったつもりなのだろうか。
どうして、やみくもに愛情を与えたがるんだ。
もっと、貪欲に自分の幸せを願えばいいのに。
美紘がずるくてイヤな女だったら良かった。
媚びたり、ねだったり、平気で嘘をつくような女だったら良かった。
なんで今になってそんなことを思うのだろう。
最初から分かっていたはずだ。
飾らない真っすぐすぎる女が、美紘なんだってことを。
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