#08

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「ごめんなさい」 「出て行ってくれ」    一瞬、美紘の目が潤んだ気がしたが、まさかこのくらいで泣くような女じゃない。 「薬と水は準備しておきますから、飲んでから寝てくださいね」  部屋を出るときは密やかなものだった。だったら最初から大人しくしていればいい。余計なことばかりしてくれる。本気で母親にでもなったつもりなのだろうか。  どうして、やみくもに愛情を与えたがるんだ。  もっと、貪欲に自分の幸せを願えばいいのに。  美紘がずるくてイヤな女だったら良かった。  媚びたり、ねだったり、平気で嘘をつくような女だったら良かった。  なんで今になってそんなことを思うのだろう。  最初から分かっていたはずだ。  飾らない真っすぐすぎる女が、美紘なんだってことを。
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