3080人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
*
カーテンのすき間から漏れる燦々(さんさん)とした光に、ドキリとして時計を見る。昼過ぎまで寝ていたなんて。ただし日曜日だと分かっている、慌てる必要はない。
体が軽くなっていた。薬が効いたのだろう、熱も下がっている。
喉が渇いていたので、部屋を出てキッチンへ向かった。人の気配がどこにも無い。美紘は出かけたのだろうか。
ダイニングテーブルの上に、メモがあった。
――買い物に行きます。キッチンの鍋におかゆがあります。冷蔵庫のゼリーもどうぞ。
よたよたとした字が並んでいる。あまりにもひどすぎる字だ。小学校の教師だというのに、こんな字しか書けないのか。
添えてある絵はまあまあだった。少しいびつだが、ネコだと一応分かる。どうしてネコが笑っているのかは謎だ。
とにかく、帰ってきたらお礼を言おう。余裕が無かったとはいえ、一緒に暮らす相手にあの態度はなかったかもしれない。
すると。リビングに置きっぱなしだったスマートフォンが鳴った。メッセージの着信を知らせる音だ。美紘からなのかもしれない、と画面を開く。
『診察券、返してください』
真由子が、しかけてきた。
めんどうだと言ったのに、しつこい。
最初のコメントを投稿しよう!