#08

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『返しますよ。ホテル以外の場所で』  しばらくして返信が届く。   『15時に待ってます』  地図が貼ってあった。今から渋谷まで来いというのか。病み上がりなんだこっちは。返事を迷っていると。 『来なければ、あなたの上司に全て話すから』  どういうつもりだ、脅しているのか?  バレて困るのは自分だって同じだろう。  真由子のあの言葉がよみがえった。 ――神谷くんはいつだって安全な場所へ逃げられるじゃない。  思考を遮るように、玄関のドアが乱暴に開けられた。 「きゃあ、わわっ」  美紘が騒ぎながら廊下をやってくる。エコバッグを両手に抱えているせいで、自由がきかないのだろう。 「樹さん、起きていて大丈夫ですか?」  その表情はどことなくぎこちない。  気にしているのか、昨夜、冷たくあしらったことを。 「ありがとうございました。すっかり体調も良くなりました」 「そうですか」  笑顔も変だ、分かりやすすぎるだろう。 「美紘さん、字が下手ですね。保護者からクレームきませんか?」 「あっ、痛いとこつかれた。実は、時々あります。もう少し丁寧に書いてくださいと、オブラートに包んではありますが」  えへへ、と舌を出す。少し調子が戻ったようだ。単純だな、と思う。     
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