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間違いなく、おかしな状況だ。誰かに見られてもまずい。こんなところで何をやっているんだ、こいつら。
「神谷です。ここではなんですから、どうぞ、中へお入り下さい」
そう言って、マンションへと促すと。
「いえいえ、とんでもない。俺はもう帰ります。いいよな、美紘?」
まるで、自分の女のような態度だった。正直、気分は良くない。
「うん、じゃあね。送ってくれてありがとう」
美紘は、またしても、ぎゅっと健太郎に抱きついた。やめろよ、と健太郎のほうが押しのける。そして、やっぱりぺこぺこしながら、大きな男は去っていった。時々ふりかえりながら、後ろ髪ひかれるようにして帰っていった。
分からない男だ、と思った。もっと分からないのは、この女だ。
「美紘さん、あなた、何やっているんですか?」
「え、ハグのことですか? ダメでした?」
ハグどころか、キスまでしてただろ。本当に、相手の男はゲイなのか? しかも人目につくようなところで。教師なんだろ、大丈夫なのか。
「ダメに決まって……」
美紘は、今度は俺にまで抱きついてきた。異様にぎゅうっと力を込められる。それに、ものすごく酒臭い。
「だって、気持ちいいじゃないですかあ」
「酔っぱらっているんですね」
思わず、抱き返してしまった。
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