#09

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#09

 前日の土曜日、小学生の陸上競技大会だったらしく、美紘は少し日に焼けていた。 それで今朝は、恥ずかしいな、と入念に手のひらにクリームを塗っていたのだ。 「うわ、私のほうが黒い」  俺の手と並べて、美紘が落胆の声をあげる。 「それに、樹さんのほうが指が細くて綺麗……」  すっかり意気消沈していた。そんなことぐらいで、と思う。それにどう見ても、女性の美紘のほうがずっと繊細な手をしている。  それにしても。購入するときはあれほど難くせつけていたというのに、今は、指に重ねづけされた二本のリングを嬉しそうに眺めている。美紘はご満悦だった。本当に、分かりやすい。  今日は、できあがった指輪を二人で受け取りにジュエリーショップへやってきたのだ。試着してみると、サイズはどちらもぴったりだった。だから、もういいだろうと、手早く済ませ店を出たかった。なのに。 「記念撮影いたしますので、こちらに」  そんな話、聞いていない。 「僕たちは、遠慮しておきます」  そう断ったのに、美紘のほうは乗り気だった。 「記念に撮っていただきましょうよ。こんなチャンスめったにないです」  写真は、まずい、そう言いたかったが、強引に美紘に引っ張られる。     
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