海水浴

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クラスの仲の良い男女混合グループでの海水浴。 「私、泳げないから……みんなの荷物見てるよ」 そう言ってビーチパラソルの下に敷かれたレジャーシートにちょこんと座る。 「……俺も焼きたくないからここに居る」 そう言って、隣には幼馴染みが不機嫌そうに乱暴に腰を落とす。 焼きたくない!?今更? サッカー部ですよね!?もう既に真っ黒ですけど?? 何がきっかけか知らないけれど、さっきまではしゃいでいた彼が急に黙り込む。 「……何か、怒ってる?」 恐る恐る聞く。 「……別に」 不貞腐れて答えるその声がやっぱり怒ってる。 チラリと彼を盗み見る。 ……ほら、怒ってる。 何だか、泣きそう。 せっかく彼に水着姿見せたくて、張り切って選んだのに……。 体育座りを更に小さくさせて顔も埋めた。 「ばか……」 「……あ?何か言ったか?」 「……別に」 今度は私が不貞腐れる番。 「……ああ、もうっ!!」 突然彼が怒りを声に表す。 両手を後ろに付いてだらしなく座る彼。 それを見て、先程よりも更に小さくなって私は座る。 ……何で怒ってんのよ、ばか。 楽しい海水浴のはずだったのに。 バスでここに来て、その後だってずっと楽しそうに笑って機嫌良かったじゃない。なのに何で……。 あ、みんなが着替え終わってからだ。 何が悪かったのかも思い付かない。 何か……泣きそう。 唇を真一文字に力を入れてただ海をじっと睨む。泣かないように……。 周りでは、みんなの幸せに満ちた笑顔ばかりが溢れている。 みんなはこんなに楽しそうなのに、泣いてしまいたい程悲しい気持ちはきっと私一人。 突然頭に、何かがふわりと覆い被さる。 ……え?何? 慌てて取ろうとしたそれを、再び剥がして彼が掛け直す。 「良いからそれ、羽織っておけって!」 「え?……何で?」 戸惑う私に、彼の口は尖ったまま。 「良いから。分かったか?」 抵抗すれば更に機嫌が悪くなるのは目に見えている。 渋々小さく頷きながら、肩に羽織り直した。
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