主人公は人の数だけ存在する

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ー?????ー 人は嫌いだ。 自身とは違うだけで異物扱いをしてくる。 大したこと無いくせに自身より劣っているだけで偉そうにする。 ほんの些細な出来事で争い事を始める。 どんなに綺麗事を述べようと裏には必ず悪意がある。 そんな奴らばかり見てきたからこそ俺は人が嫌いになった。 よくお前も人じゃん、とか言う奴がいるが論破した気にでもなっているのだろうか。 ギルド員に何度言われただろうか。 オレは人以下の存在。 魔法なんて大層な物は使えない。 出来る事と言えば… 「…これで依頼完了、か」 己の拳で生き物を殺める事くらいだ。 「そっちも終わったみたいね、お疲れ様」 「あぁ…。だがなんでこんな近場に巨大なライトニングマンティスがいるんだ?」 普通ならもっと西の方角に生息している筈だ。 それに移動してきたのならもっと早く確認されていただろう。 謎だ。 「わからないわ。でも、何かが起きているのは確かね」 「…国王に報告しておいてくれ水帝」 「その呼び名はやめてって言ってるでしょ?お母さんでもママでもいいのよ?」 「そんな歳じゃない。それに今は仕事中だ」 魔盲の俺を拾って育ててくれた恩人。 この人のおかげでオレは拳だけで戦えるように、生きていけるようになった。 オレは未だにこの人を母と呼べずにいる。 いつか呼ばなくてはいけないのだが、呼べずにいる。 理由は簡単、ただ恥ずかしいだけ。 「それじゃあ水帝補佐ヒューイ・アクリウム、私をお母さんと呼びなさい」 「卑怯な…」 上司命令とは卑怯すぎる。 「さぁ、どうするの?」 「…逃げる」 「あ、コラ!」 足はオレの方が速い。 だから簡単に逃げ切れる。
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