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船の踊り場では料理を食べながら騒ぐ船員達。
それぞれが色々な職種で、詩人や単なる旅人。はたまた騎士もいる。
思い思いに踊り、唄い、自由な船でなにより。
お酒がないのによくもこんなに騒げるものだと感心させられる。
「どんな嵐も越えてやる。海を持ち上げる竜巻だって、船を飲み込む大波だって、この船なら越えられる!目指す先にあるものよりも、その先の未来に手を伸ばせ!そこにこそ、生きる意味があるのだから」
聴こえてきた唄声は、騎士のウルフラドの、太く包容力のある逞しい声だった。
騎士の割には華奢だが、締まった筋肉は、薄着だとはち切れんばかりに服を内側から圧迫していて、破れる音が聴こえてきそうだ。
「ところで船長。あとどれくらいで着きそうだ?」
「さぁな。一週間くらいじゃないか?」
そう告げて、水平線を見る。太陽に照らされて気付けば、海は光を反射して輝き、揺れる。
「いやに静かだな。なにもなければいいが」
「心配するなよ。船長。あんたの腕は認めてるんだぜ?嵐なんてあわねぇさ」
その過大評価が、より心配にさせるのだ。プレッシャーになっているのだと、叫んでやりたい。
だが、言葉は使うほどに軽くなるのだから、やはりなにも言わなかった。
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