『おかえり』

2/2
前へ
/10ページ
次へ
そろそろ2ヶ月が過ぎようとしていた頃…。 学校から帰った私は、家の中に誰もいないと近所に悟られるのが嫌で、部屋に向かって 「ただいまー」 と大きな声で、そこに誰かがいるような振りをした。 「おかえり…」 若い女性の声…。 聞こえてはいけない声がした。 しばらくドアを開けたまま部屋の中を呆然と見つめていた…。 すぐに逃げられるようにドアにサンダルを挟み、少し開けた状態で中に入って行った。 誰もいない。 ベランダのドアを開け少し空間を作ってから、玄関のドアを閉めた。 確実に目に見えない『誰か』が、いる……。 そう思った時だった。 6畳が2つ続いている隣の部屋から女性の叫び声と小さな子供の泣き声、怒鳴る男の声がする……。 その部屋は荷物置き場になっている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加