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それにしても何故、壁にこんな空洞があるのだろうか。非常に変な造りである。
空洞とタンスとの隙間を覗いてみると、奥に木の枠が見える。どうやら向こう側に木の扉があるようだ。
このタンスをここから動かした事があるか、加藤に聞いてみると、一度もないという。
「よし、どかしてみよう」
左右の隙間に手を入れ、僕はタンスを手前に引っ張り出した。
すると案の定、空洞の奥に、木製の扉があった。観音開きの扉で、真ん中の左右に一つずつ金属の取っ手が付いている。
開けると物入れになっているのだろうが、何を入れるためのものかは、皆目見当がつかない。
「お前、ここがこんな風になってるの、知ってた?」
加藤は首を横に振った。タンスを動かしたのはこれが初めてなのだから、当然といえば当然だ。
ここが何を入れるための収納スペースなのかは、さっぱり分からない。だが今、この扉の向こうに、何かとてつもなく恐ろしいものが潜んでいる事を、僕らは何となく、そして確実に想像する事ができた。
「開けてみるか」
みんなを振り返って、僕は言った。
誰も、何も言わない。
「開けるぞ」
僕は観音開きの取っ手を両手でつかみ、それを左右にひらいた。
「あ…」
中に、一体の人形が入っていたー。
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