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と、このように書くと、とても恐ろしく感じられるかも知れないが、正直それを見て、僕はホッとしたのである。入っていたのが、こんなものでよかったとー。
もっと恐ろしいもの、つまり人間の死体の一部とか、人骨とか、そんなものを想像していた。
また、その人形の風貌も、僕を安堵させた。
それは、いわゆる怪談話に出てくるような、おどろおどろしいものではなく、幼児向けアニメのキャラクターとも思える、可愛らしい笑顔の女の子である。
身長というか、高さは30㎝くらいで、柔らかい素材の布と綿と毛糸でできている。明らかに手作りによるものだった。
僕は人形を手に取り、それを見せながら、加藤に言った。
「前に住んでた人が忘れていったタンスの裏から出てきたんだから、これも前の人の忘れ物なんじゃねーかな」
加藤は頷く。
「よし、じゃあコレ大家んトコ持ってって、持ち主に返してもらおうぜ」
なぜか僕がその人形を抱えて、僕らはここから歩いて10分ほどの商店街で不動産屋をしているという、このアパートの大家のもとへ向かった。
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