あしおと

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「おい、直人!コイツにもっと飲ませろ」 飲めない酒を無理やり飲まされて、真っ赤な顔になっているトシの頭をはたきながら、ケンが楽しそうに言った。 神奈川・横須賀中央駅前の居酒屋、お多福。僕らの馴染みの店である。 中学卒業後、別々の高校に進学した僕ら5人だったが、付き合いは続き、しょっちゅうツルんでいた。 しかし高校を卒業すると、就職やら進学やらでさすがに忙しくなり、みんな地元に残っていたが、会う機会はめっきり減っていた。 だから今日、5人全員がこうして顔を揃えるのは、本当に久しぶりの事だった。 集まった主旨は、トシが年上の彼女・リサちゃんとこの秋に結婚する事になり、その報告および彼女のお披露目だったのだが、肝心のリサちゃんが急用で来られなくなった。 1人だけ彼女と会った事がなく、この日を楽しみにしていたケンが、酒の弱いトシに無理やり飲ませて、気を晴らしているのであった。
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