あしおと

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それから1ヶ月ほど過ぎて、加藤から転居先が決まったという連絡があった。 彼の会社から程近い、鎌倉の大船にある築30年の木造アパートだという。古いが風呂付きで、加藤の狙いどおり家賃はなんとキッカリ2万円であった。 梅雨が明けた7月中旬の日曜日に加藤は引っ越しをして、約束どおり僕とケンと高田が手伝った。 男の独り暮らしだから大した荷物がある訳でもなく、高田が出した軽トラに1回の積み込みで済み、朝から始めた引っ越しは、昼過ぎには大方終わってしまった。 木造二階建てのアパートだが、加藤の部屋は下の階の角部屋だった事も、作業が早く済んだ要因であった。 「さあ、飲むべ飲むべ」 近くのコンビニで酒を買って来て、新居でさっそく宴会が始まった。 八畳の和室に台所と風呂、トイレ、洗面所があり、古いが汚くはない。 「これで2万ってのはホントに安いな。お前、いいトコ見つけたじゃねーか」 ケンが加藤にビールを注ぎながら言った。 「へっへー、スゲーだろ」 加藤は得意げである。 そんなこんなで引っ越し祝いの酒宴は続いたのだが、僕は暗くなる前に加藤の部屋を出た。というのも、ガンで入院している祖父の容態が2日ほど前から良くなく、あまり遅くならないうちに帰るよう、母に言われていたからである。 「じゃあ、お前らも早く帰れよ。加藤は明日仕事なんだから」 ケンと高田に言って、僕はアパートを後にした。
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