あしおと

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9月に入って間もないある日の晩、ケンが僕の家に来た。この男、何の前触れもなく1人でフラッと現れる事がよくある。 「エッサッサでいいんじゃねーかな、出し物は」 ポテチを頬張りながら、ケンが言った。 いよいよ来月に迫ったトシの結婚式で、僕らがやる余興の話である。 『エッサッサ』とは、体育祭で男子生徒がやる、我が中学伝統の体操である。 上半身裸の男どもが「エッサ、エッサ」の掛け声のもと、拳を前に突き出したり天に突き上げたりする、体操というよりは踊りのようなものだ。 これならカネも、準備や練習に費やす時間もかからずに済む。 「そうだな。でも裸になる訳にいかねえから、上着だけ脱いで、ネクタイを鉢巻にしてやるか」 僕の言葉に、ケンは頷いて言った。 「よし、じゃあ俺はこの後、高田んトコ行って話してくる。お前は加藤に言っといて 」 「わかった」 「あ、そういえば俺、こないだ加藤んチに行ったんだけどよう」 鎌倉で趣味のサーフィンをした後、ケンは加藤の家が近いのを思い出し、寄ってみたのだという。 「引っ越し祝いでもらったっていうウィスキーがあってな。それ飲んでたら妙に酔っぱらって、そのまま寝ちまって、結局泊まったんだけどな」 ここでケンは、声をひそめた。 「そしたら夜中、オバケが出たんだよ…」 なにー?!
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