the underground(地下鉄)

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「お疲れ様」 「え?」 お婆さんが言った言葉の意味が判らない。 「目がね、真っ赤。さっきも寝てたでしょう?」 あ、狸寝入りしてたんだった。 しまった、ここは優先席。 「あの、夜勤明けで、ぼんやりしてて」 あたふたと言い訳する自分がとんでもなく滑稽に思える。 「若いから眠いわよねえ」 ふふっと笑ってそれ以上追求してこないけど、多分バレバレだな。 目が赤いのはさっきまで涙を堪えていたから、なんて。 「帰ったらすぐ寝ないとね」 「いや、もう眠気は覚めたんで、買い物して帰ります」 降りる駅の回りには結構色々店がある。シャツ、あと二枚は欲しい。スラックスは支給だけどシャツは自前。 「無駄遣いしたらダメよ」 「逆に使うとこなくて、殆ど貯金です」 遊びにいってもゲーセン位だし、食事は寮と社食があるからそんなに金がかからない。 「たまには息抜きしたいです」
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