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走り出して暫くすると、味噌の匂いが漂って来る。
次の駅はでかい地下街がある。改札を出れば食べ物屋がずらりと並んでいる。
赤味噌。
やっと最近慣れた。
地元じゃ合わせ味噌だから、赤いみそ汁を見たときは戸惑った。
『郷に行っては郷に従え』って言うけど、水と食べ物はやっぱり中々慣れないって。
駅に止まり人が乗りこんでくる。
下を向いて寝たふり寝たふり。
隣に人が座る気配がして薄目を開ける。どうやらお婆さんらしい。薄茶色のロングスカート、グレーの靴。
次々と乗り込んで来る。サラリーマンの革靴が目の前にある。いいや、どうでも。
わずか二分の停車で満杯になった。
人から出る熱気で、空気がむっとする。
こんなに人がいるのに、僕が知っている人はいない。
僕を知っている人もいない。
流してる曲から歌詞だけが脳に残る。
『もう二度と笑えない気がする』
誰の歌かも知らない。
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