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次の駅で半分くらい降りた。乗り込む人はそんなにいない。
三つ目の駅を出る頃には車両ががらがらになった。
一気に息が楽になる。
どうせ、僕がここに座ってようがいまいが他の人には関係ない。
いてもいなくてもおんなじ。
都会にきたって、毎日地下鉄乗って叱られて、また地下鉄乗って、寝て起きて、繰り返し繰り返し。
まだ三ヶ月だろって寮母さんは言うけど、もうへこみすぎてやる気が出ない。
イヤホンを外し、顔を上げてため息をつく。
走っている時に窓から見えるのは、黒いシミがあちこち付いたコンクリートの壁。
僕が途中下車したところで、世の中が何か変わる訳じゃない。
僕が乗り換える電車に迷うだけだ。
ホテルの人達は毎日怒鳴らなくて楽になるしね。
車内灯の明かりで窓に僕の姿が映る。
眉間にシワが寄ってるのか左右の眉頭がくっつきそうだ。
口も、への字になってる。
あれ?
自分の横に。
よく見るとお婆さんが映っている。
まだ降りてなかったんだ。
僕の動揺が伝わったのか、同じように俯いていたお婆さんがゆっくりと顔を上げた。
窓ガラスの中で目があう。
慌てて下を向く。
「学生さん?」
細い優しい声が僕に向かって掛けられた、と思う。
だって僕しかいないのだから。
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