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お見舞いをした後は、叔父の家に寄ってから帰る予定でした。当初からそのつもりだったのですが、今はどうしても叔父に聞きたいことがあります。
叔父には事前に行くことを伝えずに、驚かそうと思っていたのですが、結果的に、私の方が驚くことになってしまいました。
久しぶりに会った叔父に歓迎されながら部屋に案内されると、テーブルの上には梅干しの瓶が乗っていたからです。
「・・・・・・叔父さんって、梅干し好きなの?」私はさり気なく質問しました。
「梅干し? ああ、これね」叔父は笑っていました。「梅干しなんて子供の頃に食べたきり、食べてないよ。これは昨日知り合いから貰ったんだ。旅行のお土産だよ。せっかくのお土産なのに、食べないからいらないと断るわけにもいかないし、そのままテーブルの上に放置していたよ。食べたかったらあげるよ?」
「いや、いらない・・・・・・」
私は全身の鳥肌が収まるのを待たずに、病室で起きた出来事を叔父に伝えました。
最初こそ笑顔で聞いていた叔父ですが、表情はどんどん真顔になり、最後の方は唇を噛み締めて、涙目になっていました。
「・・・・・・そんなことがあったんだ」叔父は梅干しを見つめながら、つぶやきました。
それから1時間ほど、昔話に花を咲かせました。何度も聞いたことのある話ばかりでしたが、昔話なんてそういうものです。
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