幽体離脱

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 目覚めと同時に「うわ!」と叫びながら急ブレーキを踏みました。 「寝ちゃった!」ことは、すぐに分かりましたが、自分が今どこにいるのかが分からないんです。舗装された場所なのですが、道路にしては広すぎました。  心臓をバクバクさせたまま視線を右に向けると、車が走り抜けていくのが見えました。 「ああ、そうか・・・・・・ここはパーキングか」  そう思った瞬間、とてつもない震えが体を襲いました。  つまり私はこういう状態だったのです。  居眠り運転をして、無意識のうちにハンドルを左に切り、たまたまそこにあったパーキングエリアにすっぽりと飛び込んだのです。  探してもなかなか見つからなかったパーキングエリアに、目を閉じながら入るなんて偶然は、はたしてどれほどの確率なのでしょうか?   この時のことを家族や友人に話しても、誰も信じてはくれません。  まるで全てが夢であったかのように片付けようとするんです。    この日に起きた奇跡的な出来事を振り返ると、いつも叔母に関連付けてしまいます。  叔母が幽体離脱して、私を助けてくれたのではないかと思ってしまうのです。  次に叔母と再開したのは、亡骸になってからでした。  私は自分を救ってくれた叔母に何度も感謝しながら、見送りました。
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