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名前、知っててくれた。初めて男の人にチューされた。ほっぺただけど。嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しい!!!
私はこのとき小躍りでもしたいくらいにはしゃいでいた。両想いだと。これからは一緒に映画みたり買い物したりできる。その前に連絡先を交換しなくちゃと。
けど、おもむろにイド君が下敷きを目の前に持ってきて指を動かす。
【けどごめん。つきあえない】
たっぷりと間を空けてなんでか聞くと
【海に帰らなきゃ】
と茶化された。
それが悔しくて、でもそんなイド君も愛おしくて、涙を堪えて言葉を選ぶ。
「なら、また地上に遊びに来た時にわかるように、私はここで歌って待ちますね!」
【ありがとう。さようなら】
そうしてイド君はボードを持って海へ入っていった。夜になってもイド君は姿を現さず、大きな声をあげて泣いてしまった。
それからイド君が砂浜に来ることなく、海から帰ってくることもなかった。
けど私は約束通り歌い続ける。いつかこの声を目印にイド君が帰ってきますように。ちゃんと私の声がイド君に届きますように。
そう願いを込めて今日も海へ歌う。
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