エピローグ

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 ここで残りのページに、少しだけ先の未来についてメモしておこう。  このあと、めでたく茜さんと網代さんの連名で作られた論文は、世に発表された。  なんでも、かなり評価の高いものになったらしくて、茜さんはとても嬉しそうに、俺にそれを報告してくれた。  高校生の俺には、いまいちピンとこないけど、嬉しそうな茜さんを見て、ああよかったな、って、素直に俺も嬉しかった。  そして研究室漬けの廃人生活も一段落し、きちんとした見た目に戻った茜さんから、そのとき俺は一冊の本を手渡された。  それ、あげるよ、と茜さんは言う。  二人の研究の結果は、一般の人にも分かりやすい文章に噛み砕かれた簡易版として、学術専門の出版社から本が出ることになったらしい。  確かにその本…『わかりやすい民俗学入門、呪いとは何か』の著者として、茜さんと網代さんの名前が書いてある。  へえー、身近な人で本を出した人がいるって、なんかすごいなー、なんて思いながらペラペラとちょっとだけページをめくってみたら、こんな文章が目に入った。  『…という例をもって考えてみると、呪いというものは、一種の認知欲求に分類することが可能であり、従って人間の概念が…』  スッと俺は本を閉じる。  …え? この本の題名、『わかりやすい民俗学入門…』じゃなかったっけ?  え、え、なんかめっちゃ難しげなこと書いてなかった?  もともと字がいっぱい書かれている本を読むのが好きじゃない俺は、思った。  俺が、この本を読むことは、もうないだろうと…。  悟りを得た菩薩みたいな表情で、閉じた本の表紙をみつめる俺を、茜さんはニコニコしながら見ている。  「江蓮君、その本、オレのサイン書いといたからね! 記念にね!」  言われて気づいたけど、表紙をめくった次のページになんか黒マジックで、解読不能な謎ののたくった文字が書かれている。  こ、これが、茜さんのサイン、よ、読めん…。  サインなんか書かれてたら、ブックオフに持ってけない…ハッ、い、いや、売ったりなんてしませんよ、読まなくても記念にとっときます、ホントホント。  「ちなみにさー、一番後ろの方のページ見てみて、ほらほらー」  俺の心の中の葛藤を知らずに、無邪気にはしゃぐ茜さんが、ちょっとウザめにそう言ってくるので、なんだなんだと、俺は最後の方のページをめくってみる。  
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