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「お、沖ぃ、お前ソフマップここから遠くないか? つーか、雑誌ならアマゾンで買えばいいだろうが」
真顔で赤間部長にそう答えた沖に、思わず永多がつっこんだものの、場が深刻なムードのせいなのか全員にスルーされる。
「よろしい、俺も喫煙所で一服してくると、そう話して出てきている、彼は煙草を吸わないからさすがに追ってくることはないと思うが、楽観視はできない。
時間は限られている、さっそく君たちの意見を聞かせて欲しい」
いつもの口調で淡々と犬彦が部下たちに述べると、彼らもいつものように、キリッと気を引き締め、犬彦を見る。
まず口を開いたのは、永多だった。
「やはり彼の行動には、裏があると思います。
明らかに彼は、赤間部長に探りを入れている」
次に、追従するように沖が話す。
「そうですね、僕も同感です。
さすがに部長のいる前や、営業部のメンツがいる手前では若干おとなしくしてますけど、他部署にまで足を向けて、部長のことを探っているみたいです」
沖の言葉を聞いて、少し憤るような口調で五月女も続く。
「新人が、新しく自分の上司になった人物のことを、詳しく知りたいと思うのは一般的に見ても、当然かもしれません。
しかし、彼は度を超えているように感じます。
他部署の子たちにも確認しましたが、部長の仕事上のスキルや人脈の他にも、プライベートな内容まで尋ねられたそうです、これは由々しき事態です!」
イライラしながら声を荒げる五月女に、彼女を挟むようにして立っている永多と沖は、シーッと静かにするようにとのジェスチャーをしながら、まあまあ落ち着いてくれとフォローに入った。
そんな信頼できる部下三人の様子をみつめながら、犬彦は考えた。
そうか、やはりそう感じていたのは、自分だけではなかったのだ、と。
だが、そうだったとしても…。
「しかし、なぜ俺の身辺を探ろうとする?
彼の目的は一体、何なんだ?」
考え込むようにポツリと呟かれた犬彦の言葉に、ハッとなった三人は上司の顔をみつめてから、次に仲間の顔を見比べて、そろそろと仮説を口にし始める。
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