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それでもまあ、ただ業務中につきまとわれるだけで済むなら、単純に自分が我慢すればいいだけの話だったので、基本的に物事の切り替えがあっさりできるタイプの犬彦は、ほんっとうに嫌だったけれど、すべては穏便にスルーで終わらせようと考えていた。
(とにかく定時に帰りたかったので)
しかし、それでも嫌だなぁと思う気持ちは消すことが出来なかったのか、常日頃のポーカーフェイスを職場でも崩さないはずの犬彦だったのに、そのときばかりは、うんざりとした表情が少し顔に出てしまっていたようで、そんな犬彦の様子を、心配そうにみつめる人物の視線に、犬彦は気づくことができなかった。
仕事では常に先手を打ち、先読みを外さない優秀な赤間部長も、このあと起こる騒動は、さすがに想定の範囲外だったようである。
ハプニングというものは、ある日いきなり起こるものだから、仕方のないことかもしれないが。
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