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10月13日金曜日
「まあそれにしたって、森田の目的ってのは、何なんだろうなー」
経理部の給湯室で行われた極秘ミーティングから二日後、永多、五月女、沖の三人は、ちょうど空いていた小会議室に集まっていた。
小会議室の長テーブルで、自分のノーパソを開き、それぞれの仕事をしながら、雑談をする。
彼らはもう長いつきあいなので、三人だけで集まると、一気にだらけた空気になる。
長テーブルの上には、書類の他にも、コーヒーやお菓子も散乱しているし、パソコンに向かう姿勢も、だらしなく斜めになっていたり、足を組んで猫背になったりしていた、それでも、三人それぞれがパソコンのキーボードを打つ音はなめらかで、滞ることはなかったが。
「今日も相変わらず部長にべったりですしね。
今だって、部長ひとりで十分な外回りに着いて行っちゃいましたし。
今月来たばっかりの新人に、それほど期待はしてませんけど、こっちは年末に向けた納期に追われてるってのに、部長の尻追っかけてる暇があるなら雑用でも頼みたいくらいなのに」
「ハッハー、言うじゃねーか沖! お前の言う通りだけどよ。
正直、今のところ森田の評判ってよくねーよな、頼んだ仕事はきちんとこなしてくれるけど、あいつ、デスクワークより部長の追っかけを優先するからな。
とはいっても、専務のお墨付きで部長の直下に入ってる形だし、誰も文句は言えないけどさ。
本店からの出向ってとこからして、半分部外者の面もあるからな」
「そこも問題ですよ、営業部のメンバーで上昇志向のあるメンツは、ずっと前から部長に着いて仕事をしたいって思っているんですから。
でも部長も忙しいですし、直接教えを請うなんてシチュエーションはほぼ皆無であって、みんな我慢…っていうか、チャンスを虎視眈々と狙っているのに、外部から来たポッと出の新人が…しかも自分たちよりスキルの低い奴が、毎日毎日部長につきまとっているんですから、面白くありませんよ」
「そりゃフラストレーション溜まるよなぁ、オレだって最近じゃ、部長とツーマンセルで仕事することないしなー、現場での部長見たことあるか? マジ神がかっててスゲーぞ」
「へえー、いいですねぇ永多さんは。
僕は後方支援班に回ることが多いですから、噂でしか知りませんよ」
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