1 おだやかに事件の幕は上がる

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 このカフェで、飯を食ってみたい!!  と、当然思ったのだけれど、それがなかなか難しかった。  おしゃれオーラがすごすぎて、入店のしづらさがハンパなかったからだ。  何度店の前を通ってみても、高校生がいるところなんて一度も見たことがなかった。  いかにも仕事ができそうなビジネスマンや、かっこいい外国人、キレイに着飾った若い女性のグループ…店内にいる人たちは、そんな大人ばかりだ。  別に、高校生の入店お断り、ってわけではないだろうけど、そんな空気のなかに突撃する勇気はなかなか湧いてこない。  クラスメイトたちにも、あのカフェについて話をむけてみたことがあるけれど、店の存在を知っているやつがいても、店内に入ったことがあるツワモノは、女子さえも誰もいなかった。  「ああ、あのカフェ、知ってるよ。  でも入ったことはないなあ、駅前にスタバがあるからそれでいいじゃん」  「うん、あのカフェおしゃれだよね。  ちょっと行ってみたい気もするけど、落ち着かなそうだよね。  そもそも入りづらいしさ」  「あーあそこね、店の前通ったことあるけど、高そうじゃね?」  とまあ、だいたいがこんな返答で、やはり高校生にはいろんな意味で敷居が高いのだった。  しかし俺はあきらめない。  高校生の友人たちを誘って、あのカフェに突撃するのは無理そうだ。  でも、自分ひとりで、あのおしゃれ世界に侵入するのも、けっこうキツイ。  だがしかし、俺には最終兵器があった。  そう、犬彦さんだ。  犬彦さんは、まさに仕事のできるビジネスマンだし、おしとやかにさえしてくれれば、見た目もかっこいい大人の男性だ、充分にあのおしゃれ空気のなかに馴染むことができるだろう。  (実際の犬彦さんというひとが、どんなにアレなカンジだったとしても、外見からならバレはしない)  
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