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はたして木製の『仮面』を取り外すと、『仮面の亡霊』の素顔が見える。
『仮面』を奪い取ったあと、さらに赤間部長は、亡霊が頭から被っていた『白い着物』を首元まで引き下げた。
「森田くん、こいつから着物を剥ぎ取れ」
そのように指示された森田は、やれやれと思いながらも(かといって部長の命令を拒否するわけにもいかない、そもそも自分がやらなかったら赤間部長みずからが実行することになり、そうなったら乱暴に着物を剥ごうとするだろう)介護士が寝たきりの老人を着替えさせるときのように、苦労しながらも、なんとか白い着物を脱がせることができた。
所詮その着物は、ただ上から羽織っているだけだったので、それほど時間はかからなかったのだが。
「この『仮面』と『白い着物』も没収だな」
こうして『仮面』と『白い着物』を赤間部長に奪われてしまった元亡霊は、すっかり人間の姿に戻って、だらしなく地面で失神している。
一仕事を終えた森田は、その人の顔をまじまじと見てみた。
「この人…誰なんでしょうか、部長のお知り合いの方ですか?」
「知らん、こんなガキ」
倒れているその人物は、若い男性だった。
服装は、ダボッとした汚れの目立つパーカーにジーンズ、ナイキのスニーカーを履いている。
まだ二十代前半の森田から見ても、彼の顔つきは、幼いとまでは言わないが若かった、おそらく十代だと思われる。
そう感じるのは、失神しているせいで半開きのだらしない口元のせいだけではないだろう、体格はしっかりしているが、ある程度その人物の精神年齢というものは顔に表れるものだし、服装のチョイスも十代っぽかった。
自分がこれまでに会った島民の誰かに、顔つきが似ているような気もするが、よくわからない。
そもそも、こんな見事にがっつり金髪にしている子だったら、面識があればすぐに思い出せそうなものだが…。
「うーん…『仮面の亡霊』の格好をしていたということは、島民であることは間違いないですよね…。
そして赤間部長に襲いかかってくるとは…。
部長、この子から何か恨まれている覚えはありませんか?」
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