第一話

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「え?僕、注文してませんけど?」 飯淵さんは、親指と首を傾け、カウンターの方を見た。 指を向けられた先にいたのが、宮だった。 「え……。なんで。」 あからさまに嫌な顔をしながら横目で宮の事を見た。 「お前が、お好みなんじゃないのか?俺の見たてはな、お前と年は変わらないはずだ。」 「じゃ、だめじゃないですか。」 飯淵さんは呑気に顎髭を撫でながら「面白そうだから、入れてやった。」と言った。 横目で見ていた僕は、いつの間にかしっかりと宮の横顔を見ていた。 視線に気が付いた彼は、ぶっきら棒に「なに。」と言ってスマホに視線を戻してしまう。 おごってもらったお礼を言って、名前を聞いて、少し話をして……。 宮は口数が少なく、あまり顔をこちらに向けない。 案外シャイな奴なのかも、そう思った。 飯淵さんのみたては見事にビンゴで、宮も学生だということが分かった。 しかも、同じ高校。 でも、学年やクラスまでは教えてくれなかった。 この日、飯淵さんの計らいで、連絡先を交換することになり、この日から、頻繁に連絡を取るようになり……。
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