第1章【喪失】

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だが……それ故に、父は自らを責め続けながら生きなければならなくなった。 僕はその時、初めて父の苦悩を知ったのである。 父が背負ってきたモノ……。 自らを責めながら生きる人生を――。 (これが父が背負ってきたモノ……。) そして、その直後、別のイメージが僕の意識内に浮かび上がる。 それは具現器たる黒きフェイト・ブレードを通じて、僕の意識内に生じさせた光景だった。 広場の中心にて何者かと戦う父の姿。 街の所々は焼け崩れ、死傷者の山が築かれる。 人々は泣き叫び、亜人達に殺されてゆく……。 そんな中、父は広場中央の安らぎの像の前にて、剣を構える。 その剣先を向けるは、眼鏡をかけた黒き外套を纏いし青年――。 そして意外にも、劣勢にあるのは父の方であった。 細身の剣で父の剣撃を受け流す青年――。 正直、信じられない光景であった。 何故なら、父の能力【スキル】はあらゆる軌跡を瞬時に把握するもの。 つまり、これからどう攻撃し、どう回避するのかを瞬時に把握できるのである。 まして父の使用する剣、捕捉系上位具現器たる無影【ムエイ】は望む場所全てに、斬撃を放つ機能を有しているのだから。 だが……現実は違った。 優位である筈の父の斬撃が、その青年には掠りもせず空を切るばかり。 逆に父は青年の突きにより、浅いとはいえ手傷を負い続けている。 何とか攻撃を凌げてはいるが、それも所詮は時間の問題。 そう思った直後、鋭き一撃が父の胸に突き刺さる。 決着はたったの一撃により、決した。 僕は声も無く、そのイメージを見据える。 崩れ落ちる父――。 薄ら笑いを浮かべる眼鏡の青年。 その場には僕の姿は無く、ただ僕はそれを知るに至っただけ……。 このフェイト・ブレードがあれば防げる事態なのではなかろうか……?。 不意に僕の中に、そんな思いが過る。 だが…死に行く父は心の内で、 そんな僕の思いを否定していた。 フェイト・ブレードを所持してすら自分では、この青年には勝てない――。 イメージの中の父は、その事を知っていた。 ――何故なら、この青年にも運命を・・・――。 (僕は認めない、こんな無慈悲な運命など!) 僕は即座に、そんな理不尽を否定する。 父程の強者が、負ける事が信じられなかったからだ。 この状況に至るまで後、二時間弱――。 それは急げば間に合う可能性のある筈だ。
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