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そして、このフェイト・ブレードを手渡し最悪の運命を変える事だ。
だから、それが終わるまでは……。
(少し待っていてください、エランス第四部隊長。
為すべき事が終わったら必ず、戻ってきます。)
正直、後ろ髪を引かれる思いだった。
可能ならば今すぐにでも、二人を弔ってあげたい思いが僕の内に充満する。
だが――。
今は、それが成せる状況にはない。
それ程までに、状況は切迫していた。
僕は様々な思いを振り切り、父の元へと急ぐ。
(しかし一体、何者がエランス第四部隊長をあんな無惨な姿に……?)
正直、にわかには信じられない状況であった。
エランス第四部隊長は、父に次ぐ実力者たるライエルト副師団長に近い実力を有している。
つまり彼は、達人と呼ばれる類いの相手であろうと、ハイ・ドラゴン数体であろうと互角どころか、倒しえるだけの実力を有していたのだ。
果たして、彼ほどの実力者がそう易々と倒される者だろうか?
その事をふと考えた直後、あのイメージ内にあった父を倒した青年の事を思い出す。
もし、彼と同じような力量の者が他にもいたならば、この信じ難い状況は必然だった。
しかし――。
(あんな化け物じみた輩が、他にもいる……?
いや、そんなバカな……。
そんな事、ある筈がない。)
僕は一瞬、脳裏を過った可能性を必死に振り払いながら、ただひたすらに広場を目指す。
だが、走り続ける中、不意にむき出しの殺気が叩きつけられる。
それは雑な感情むき出しの殺気。
洗練された純粋な殺気ではない。
(亜人の類いか……。
それもどうやら、知性の乏しい方の連中みたいだな?)
僕は殺気の発生源に視線を移しつつ、出方を待った。
そして、物陰より何かが飛び出す。
(獣人系の亜人か?)
数人は七体。
僕は豹の頭部を有した人型のそれを見据えながら、剣を持ち身構える。
当然、ただの剣ではない。
中級具現器たる螺旋【らせん】である。
螺旋は、剣速に比例した旋風の槍を生み出す具現器――。
速度を旋風の槍の破壊力に、変換する能力を有するモノ。
(貫き尽くせ、旋風の槍よ――!)
僕は剣速を上げながら、豹の亜人達に旋風の槍を放つ。
その直後、豹の姿を有した亜人達の体は旋風の槍に貫かれ、絶命する。
容易い事だった。
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