【序章】邂逅

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(遂に来てしまったか……。 この時が。) 窓を覗き見ながら、黒衣の青年は呟く。 曇り空で雷鳴轟きし中、何者かの侵入を知らせる合図が響く。 だが、その相手が何者であるのかを黒衣の青年は知っていた。 そして、相手もまた自分が誰であるのかを知っている……。 お互い運命の見据える立場にあるが故に、理解していた。 だが…この日の訪れを分かっていて尚、心の何処かで、この日が訪れぬ事を願っていたのである。 しかし……。 (皮肉なモノだな……。 まさか君と、この様な縁だったとはな――。) 青年は小さく、ため息をつく。 救う為に戦い――。 救う為に、大切なる者を倒す――。 皮肉にして矛盾。 それが今の自分と、彼女が成さんとしている事――。 故に青年は切なき思いを、内に過らせる。 だが、如何に悲しみや苦しみに満たされようとも、そこに後悔は無かった。 何故なら、とうに覚悟は出来ていたからである。 そして彼女もまた覚悟を決めたが故に、ここを訪れたのだ。 ならば、取るべき道は一つのみ――。 もう引き返せないのだから……。 (今更、道は無しか……。 だが、それは十年も前から分かっていた事――。) 青年は苦笑しつつ、黒い柄に右手を添える。 そして、部屋を出ようと出入口に向けて歩を進めた。 しかし、青年は扉から七歩程離れた位置で突然、その歩みを止める。 青年は理解していた。 幾千幾万の未来にあって、彼女が自分を呼び止めない状況はほぼ皆無であると――。 だから一秒程、扉の前で青年は立ち止まる。 そして、後方より待ち人の声が響いた。 「陛下自らが、行かれるのですか?」 彼女は扉の無い空間より、不意に気配を持って現れる。 陛下と呼ばれし青年にとって、それは馴染みある状況だった。 「ミスリア卿の言う通りだ。 侵入者の相手は、僕でなければ対処できない。 だから君は皆に、一時避難するよう伝えてくれないか?」 だが、 ミスリアと呼ばし女性は赤いフードを取りながら、陛下と呼びし青年に向けて言う。 「それは承服しかねます陛下。 私達は貴方様に惹かれ、貴方様と共に在る為に、ここに集っています。 だから、納得頂けるだけの理由を示して頂けなければ、その命に従う事は出来ません。」 「だろうな……。 君が、そう答えるのは分かっていたよ。」
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