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褐色の肌に美しい銀髪……。
そして、エルフィード固有のやや尖った耳――。
青年は美しくも、その見慣れた姿を見据えながら静かに言う。
「では、どうします?」
「そうだな……まずは取り敢えずは説得させてもらうよ。
例えば、君の一人の友人、ルインとして頼んだとしたらどうかなミスリア。」
「それなら尚更です。
友人たるミスリアとしては、大切な友人たるルインを一人にするなど、とても出来ません。
何せ貴方は、何時も無茶な事をしますから。」
ルインは静かに微笑む。
ミスリアが、こう答えるのは分かっていた。
だが、一見不要に見えるこの行為はある過程において必要だったのである。
それを理解するが故にルインは、続け様に言った。
「そうか……。
なら、見せるしかないようだな君に僕の見ている世界を――。」
「どういう意味ですか?」
「聡明な君ならば、もう気がついているの筈だ。
僕が手にしている、この黒い剣が何なのかを――。」
ルインにそう問われ、ミスリアは重たげに口を開く。
「では……やはり、それはフェイト・ブレードなのですね?」
「その通りだよミスリア。
これはフェイト・ブレード【臨影(りんえい)】
絶望的な運命を、変える力を有した禁断の法具だ。」
「それがあの黒きフェイト・ブレード――。
運命を変える代償として、持ち主の生命と精神を、削り取る呪縛の剣・・・・・。」
ミスリアはやや悲しげな表情で、ルインに向けて言う。
それはルインが幾度無く、見てきた彼女の悲壮感に、満ちたる表情。
見ないで済ませたかった表情だった。
だが……。
彼女を納得させる為に、ミスリアにもっと悲しい思いをさせる事になる。
ルインはその事を、嫌という程良く知っていた。
そんな悲しげな表情のミスリアの見据えながら、ルインは彼女の右手を黒きフェイト・ブレードの柄へと、触れさせる。
その直後――。
ミスリアは大粒の涙を流しながら、ルインに言った。
「こんな思いをしてまで、貴方は――・・・・。」
彼女は、それ以上言葉を続けられずに黙り込む。
「済まないな……。」
ルインは小声で、ミスリアへと詫びた。
そして、ルインが扉へと右手を当てた瞬間、ミスリアは再び口を開く。
「・・・・・・一つだけ教えて下さい。
今、我々を奇襲せし白き剣士はサクヤなのですか?」
「あぁ、サクヤだ。」
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