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「カザギ団長、リスターク北東周辺三キロ圏内に異常はありません!」
「了解した、カザギ第七部隊長。
他に戻っている者はいるか?」
「第八部隊、ただいま戻りました。」
「アルホーン第八部隊長、状況報告を――。」
「リスターク南西、三キロ圏内異常ありません!」
「了解した。
これで周辺警備に向かった部隊は、全員戻ったな。
皆、職務ご苦労だった。
夜間警備部隊への引き継ぎにて、本日の警備の任は終了とする。 」
カザギ団長の号令により、職務の終了が告げられ僕達、守衛師団は早々にその場から立ち去る。
それは、もう何年も続けられてきた見慣れし光景――。
だが、それは僕にとってある意味、自然とはかけ離れていた。
何故なら実の父に対し、僕は父親としてではなく、守衛師団の団長として接しなければならなかったからである。
そんな状況になった切っ掛けは時を遡る事、七年前――。
ある出来事が僕と父の在り方を、狂わせた。
その切っ掛けとは、母と妹の死である。
それは父が、職務に従事していたが故の悲劇だったのだろう。
病に伏せっていた病弱な母の為に、妹のミツハは僕達に内緒で薬草を取りに出掛けた。
そして、悲劇は起こる。
その日は、不運にも徒党を組んだ亜獣達の襲撃が起こったのだ。
当時のリスタークは、まだ防衛準備不足であり守衛師団もまた在住して間もなかった為、地理などの把握が不十分だったのである。
故にグランド・ドラゴン並びに、ハイドラゴン数体、そして、その他様々な亜獣の襲撃に対応出来る筈もなく……。
この襲撃により、十数万人の死者が出た。
その後、父と守衛師団の活躍により、グランド・ドラゴン並びにハイドラゴン……。
亜獣の群れは何とか討伐されたのだが――。
その代償は、想像以上に大きかった。
死者の数は、当時のリスターク人口の約三分の一。
そして……その死者の中にミツハと母が居た。
ミツハは亜獣達の襲撃に巻き込まれたが故に…。
母は、僕を庇ったが故に、命を落としたのである。
父は僕を責めなかった。
まるでこうなる事を理解していたかの様に、ただ冷静に母とミツハ……そして、この襲撃により犠牲と死者達を埋葬する。
父は表情こそ曇らせたものの、涙一つ流さずに家族や隣人達を見送った。
何故、父がこの時、この様に振る舞ったのかは分からない。
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