漂う嫌悪、彷徨う感情。

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   泣きじゃくるオカンを支えながら4人でリビングへ。  中に入ると、ソファーに座っていた真琴がこっちを見た。  美紗の顔が一気に強張る。オカンの事はオトンに任せ、俺は美紗を支えようと美紗の背中にそっと手を置いた。  「居たんだ、真琴」  緊張で硬直する美紗の代わりに、俺が真琴へ声を掛ける。  「居るでしょ。自分の家なんだから」  美紗が勇気を出して来てくれたというのに、ふてぶてしい態度の真琴にイラっとする。  「逃げて居ないもんだと思ってたわ」  美紗の為に話し易い環境を作るべきなのに、真琴に苛立って、言葉に棘が立ってしまう。  「何で私が美紗から逃げなきゃいけないのよ」  真琴にとって『美紗を避ける』という選択肢はプライドが許さなかったらしい。
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