漂う嫌悪、彷徨う感情。

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   「俺も一緒にいただろ。何もなかったんだろ? 昨日も言ったよね? 反省しなくて良い事は反省しなくていいんだよ。悪い事も疚しい事もしていないなら、堂々としていればいい。変にオトンやオカンが不安がったり勘ぐったりしそうな話はしなくていいんだよ」  美紗に余計な事を話させまいと、美紗に強い視線と強めの言葉を放つ。  俺自身、美紗と和馬の間には本当に何もなかったのか、100%疑いを拭い去れてはいない。だけど、美紗を信じると決めたし、何より美紗を信じたいんだ。だって、美紗が勇気を出して俺の元に戻って来てくれたから。それは紛れもなく美紗の誠意だから。俺を好きでいてくれる気持ちは、間違いないと確信しているから。  何の話をしているのか分からないオトンは、首を傾げてはいるが、空気は読めているのだろう。首を突っ込んではこなかった。  一部始終を聞いていたオカンも、俺らの話に口を挟んでこようとはせず、用意したお茶を配り、オトンの隣に腰を掛けた。
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