漂う嫌悪、彷徨う感情。

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   だけど、黙っている事に抵抗がある様子の美紗は、『真琴ちゃんはどう思う?』とばかりに真琴の方を見た。  「お兄ちゃんと結婚するって事は、お兄ちゃんが上手くやってくれたんでしょ? あの日。そうじゃないなら、私は美紗を軽蔑するし、過去のイジメの反省も一切しない」  言葉を選びながら探りを入れる真琴。美紗と和馬の温泉の件は、真琴だって引っ掛かるところだろう。だけど馬鹿なりに、怒り任せに全部を暴露してしまっては状況が悪化する事は理解出来ているのだろう。   「勇太くんが上手くやったと言うか…でも、うん。結果的にはそうかも」  和馬と何もなかった事は伝えたいが、俺の事をどう話せば良いのか悩んでいる様子の美紗は、真琴の質問の答えに四苦八苦。なぜなら俺は、特に何も上手くやっていなかったから。  「…なるほど。つまり、どうこうはなっていないけど、お兄ちゃん自体はポンコツだったって事?」  今まで散々馬鹿にされた報復とばかりに、真琴が俺に呆れた笑顔を向けた。
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