漂う嫌悪、彷徨う感情。

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 「…イヤ。そういうわけでは…。勇太くんの存在が大きかったっていうか…」  そんな真琴に、美紗が変なフォローを入れる。  「要するに、お兄ちゃん自体は何もしてないけど、美紗的にお兄ちゃんの事が気になって戻る決意をしたって事?」  しかし、美紗の擁護の甲斐なく、真琴にバッサリ要約されてしまった。しかも、美紗が俺に話した事をズバリ的中させていた。真琴は勉強は出来ないが、結構鋭い。  「…もう少し違う言い回しにしてくれると頷き易いんだけど…うん。そんな感じです」  俺に気を遣ってか、返事が吃る美紗。  「お兄ちゃんって昔からそうなのよね。勉強は出来るのに、他がしょぼいのよね」  真琴が俺を見ながら嘲笑った。  「オイ、話が変わってるじゃねぇか。馬鹿の特徴だよな。話が逸れている事に気付かない。あ、真琴は性根が腐ってるから、わざと逸らしたのかもな。どっち?」  真琴の態度が癇に障る為言い返すと、  「話を変えたのは私。ゴメンね、勇太くん」  真琴ではなく美紗に謝られてしまった。  「そう。私ではない」  そして真琴は勝ち誇ったかの様に笑った。
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