漂う嫌悪、彷徨う感情。

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   「いいよ。寛大な人ぶらなくて。 赦せるわけないじゃない。私、美紗の事3年間苛め抜いたんだよ? 『ごめんなさい』の一言で済むわけないじゃない。今の私にはこれ以上のお詫びは考え付かない。他に何かして欲しい事があるなら聞くけど、無いなら受け取って」  しかし、真琴は引かなかった。真琴の謝罪の気持ちは本物なのだろう。  「他にって…。急に言われても…」  『どうしよう』と美紗が俺の顔を見た。  「真琴がそう言ってるんだから、受け取ってやろうよ」  『ね?』と美紗の肩を摩るも、  「…でも」  美紗はやはり、高額のプレゼントを貰うのに気が引けるのだろう。今度は俺のオトンとオカンに助けを求める様な視線を飛ばした。  美紗の様子に気付いたオトンが、  「遠慮なんかしなくていいし、すべきでない。これで勘弁して下さいとは言わない。美紗ちゃんの苦痛はこんなものでチャラになる様なものじゃない。だけど、真琴の反省している気持ちはどうか認め欲しい。そして、私たちも謝りたい。真琴の親として、何も気付かず真琴を注意することさえせずに、美紗ちゃんを苦しめ続けてしまった事、本当に申し訳ありませんでした」  美紗に真琴のプレゼントを受け取る様に促すと、深々を頭を下げた。そんなオトンの隣でオカンも『ごめんなさいごめんなさい』と上半身を折り畳む。
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