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「いいよ。頭は悪いけど、旅行に関してだけは美紗より詳しいし、知識もあると思うから。じゃあ私、そろそろ仕事に行くわ」
美紗に笑い返し、オカンが用意したお茶を啜ると、ポーチからグロスを取出し唇をテカテカにする真琴。
「そのグロス、廃盤になっちゃったよね」
入念にグロスを塗りたくる真琴を見ながら何の気なしに話した美紗の言葉に、
「嘘でしょ!? もう売ってないの!? 買い溜めしておけば良かった」
真琴が身を乗り出し、美紗に顔を近付けて驚愕した。どうやら真琴のお気に入りのグロスだったらしい。
「私、まだ売ってるところ知ってるから、買い占めておくよ。色、3番だよね?」
至近距離にある真琴の顔に驚きながらも、真琴に笑顔で答える美紗。
こんなにも近くに真琴がいるというのに、美紗の呼吸は乱れなかった。
美紗が少しずつ真琴に心を開いてくれている様で嬉しい。
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