漂う嫌悪、彷徨う感情。

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 電車に乗って、真琴愛用の廃盤になったグロスが売っているという化粧品店へ。  店頭にあった5本全てを買い占める美紗。  2番も3番も似た様な色に見える為、『2番も買っておけば?』と美紗に2番のグロスを手渡すが、『色が違うでしょ』と元の位置に戻された。『ほぼ同じ色じゃん』と言うと、『違うから番号が違うんだよ』と美紗に当たり前の返事をされた。男から見たら変わりのない色も、女の目から見たら『違う』らしい。女って難しい。そんな、いじめっ子といじめられっ子の女2人の仲が少し深まった今日は、きっとミラクルな日なのだろう。  無事、真琴のグロスを確保すると、12:00を過ぎていた。  ランチをすべく、近くにあったカフェに入る事に。  オーダーを済ませ、料理が来るまでの間、美紗はさっき買ったグロスを取り出しながら『真琴ちゃん、喜んでくれるかな』と顔を綻ばせていた。  優しい美紗の笑顔を、ずっと見ていたいなと思った。
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